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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第七回・禄】祭男爵奇談

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チキチキチキという自転車のチェーンの音と足音しか聞こえない帰り道
体育館を出た時時計は午後八時半を少し過ぎていた
「思えば俺チャリできてたんだからやっぱ先帰らせればよかったな;」
京助が振り返り慧喜の背中で寝息を立てている悠助を見た
「興奮して疲れたんだっちゃね;…こっちも;」
緊那羅が悠助を見てそしてそれから自分の腕の中で寝こけているコマとイヌを見た
「義兄様って毎日あんなことしてたんだ」
慧喜が悠助を背負い直して聞く
「あ? …あぁ~まぁ…うん毎日っていうかここ一ヶ月くらい前位から?」
京助が言う
「だからたまに帰り遅かったんだっちゃね」
緊那羅が言う
「でも最近は毎日だよね? ヒマ子義姉様寂しがってたよ?」
慧喜が言う
「…さいですか;」
京助がヘッと笑って鞄を肩にかけ直すとカチャリという音がした
「…鳴子」
緊那羅が呟いた
「…持ってみるか?」
京助が自転車を止めて鞄から鳴子を取り出した
「そいつ等かせよ」
そして寝こけているコマとイヌを緊那羅から受け取った
「…なんだか…これ…変わってるっちゃね」
カチャカチャと鳴子を鳴らして緊那羅が笑う
「コレもって京助…とか踊ってたんだっちゃね」
緊那羅が鳴子を京助に返そうと前に出した
「鞄に入れてお前持ってて。俺こいつ等チャリに積んでいくから」
そう言うと京助はコマとイヌを自転車の籠に押し込んでストッパーを上げた
「義兄様も緊那羅も遅い~!!」
先を歩いていた慧喜が京助と緊那羅を呼んだ
「ヘイヘイヨ;」
そしてそのまま京助が歩き出しすと緊那羅も京助の後を追いかける
少しジメッとした空気の暗闇の中にチラホラ見える家の明かりとかなりの間隔を置いて立っている数少ない街灯
時折聞こえる車の音

「…夜って静かだったんだっちゃね」
「はぁ?;」
緊那羅の言葉に京助が疑問系の声を出した
「あ…いや; あの…私京助のところに住む様になってから…楽しくてだから…夜がこんなに静かだったなんて…って思っただけだっちゃ;」
緊那羅が慌てて言う
「なんだソレ; 俺ン家が年中騒がしいみたいじゃん;」
京助が言った
「俺も楽しいよ」
慧喜が会話に入ってきた
「だからもう戻れない」
慧喜が言う
「戻りたくない」
また慧喜が言う
「…好きなだけいりゃいいじゃん」
京助が自転車を押して慧喜の横を通った
「母さんも言ってただろ? 大家族が好きだってさ」
足を止めて京助が振り返る
「戻りたくないならいれば?」
そして呆れたように笑う
「…いいの?」
慧喜が京助を見た
「お前悠から離れねぇだろが;」
溜息をついた京助が笑う
「…私も…?」
緊那羅がおそるおそる京助に聞いた
「今更;」
ヘッと笑った京助を見て緊那羅が目を細めて嬉しそうに笑った
「さぁって…明日も学校だし…帰るぞ」
再び自転車を押し出した京助の後に慧喜と緊那羅も続く
「義兄様ってどんなに早く寝ても絶対寝坊するよね」
慧喜が緊那羅を見て言う
「うん」
緊那羅が笑いながら先を行く京助の背中を見た
「でも寝坊してくれないと私の朝の調子が狂うっちゃ」
「いえてる」
慧喜と緊那羅が揃って笑った