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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第七回・禄】祭男爵奇談

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「ヒマ子さんは本当京助が好きなんだっちゃね」
ゴトゴト鉢を引きずって縁側にたどり着いたヒマ子に緊那羅が言う
「当たり前ですわ!! そうでもなければ操を立てたりしませんもの!!」
ヒマ子がきっぱり言い切ると緊那羅が笑う
「緊那羅様はどうなのですか?」
縁側から庭に降りる時用にと取り付けられた板の上をゴトゴト渡りながらヒマ子が緊那羅に聞く
「私は…好きだっちゃよ」
緊那羅が縁側に腰掛けて答えた
「ソレはどんな風に好きなんですの?」
ヒマ子が緊那羅の前に立って静かに聞いてきた
「…ただ…好きじゃ駄目なんだっちゃ?」
緊那羅がふっと笑うとヒマ子が頷いた
「私の好きは…正直私にもわからないっちゃ」
少し冷たい夏の浜風が緊那羅の髪をなびかせた
「でも好きには変わりないっちゃ…だから守りたい」
緊那羅がそう言いながらヒマ子に笑顔を向けた

漁師さんの作業小屋やいたるところに貼られた手書きの文字だけの告知ポスターによって祭りムードが高まっている正月町
「小島さきえって誰だよ…;」
そのポスターに書かれていた多分駆け出しの演歌歌手らしい人物の名前を見て中島がボソッと言う
「同じインディーズならレトロ本舗とか呼んでほしいよねぇ」
南が手を腰に当てて苦笑いをする
「爺婆ノリノリすぎて救急車沙汰になるだろうが;」
坂田が南に突っ込んだ
「そういやお前ら御輿と旗持ちどっちにでるんだ?」
京助が3馬鹿に聞く
「俺御輿」
坂田が挙手して言う
「俺も」
中島も手を上げた
「俺も今のところ御輿かな」
南も言った
「…全員御輿かよ;」
京助が口の端を上げて笑った
「まぁ男子は基本的御輿だろうよ」
中島が言う
「制服でひたすら練り歩くより半纏着てハッチャけてた方が祭り祭りしてていいじゃん」
坂田が歩き出した
「それもそうそう」
南も足を進める
「にしても私服で学校来るって何だか変な感じ~」
校門をくぐったところで南が言う
「緊那羅もいるってのが更に変な感じ~」
坂田が京助の後ろを歩いていた緊那羅を見た
「え?;」
緊那羅がきょとんとして坂田を見返す
「一組のカップル見ているみたいで何だか変な感じ~」
中島が言うと京助が中島のハラに勢いよくブッチャーをかます
「祭りって準備期間があってこその祭りだよねぇ~文化祭といい体育祭といい地区祭りといい…準備期間のほうが燃えるのはどうしてなんだろうねぇ」
生徒玄関を開けながら南が言う
「いつもなら休みの日に学校集合とか言われたらバックレ上等な気分になるもんな」
京助が自分の靴箱の前で靴を脱ぎ始めた
「そうそう!」
南が嬉しそうに京助を指差して言う
「不思議だよナァ…祭りパワー」
下駄箱の前に敷かれたスノコの上に上靴で上がった坂田が爪先をトントン打ち付けて上靴を履く
「あ、緊那羅はスリッパいるよな~…職員玄関から借りてくるわ」
一足早く上靴を履きおえた中島が緊那羅を見て言った
「頼んだ中島」
京助が言う
「このお礼は午後からの暇つぶし場所提供でチャラな」
中島が京助に言った
「ヘイヘイ;」
京助がヒラヒラと手を振った