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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第七回・禄】祭男爵奇談

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「京助制服しわになるっちゃ;」
脱ぎ散らかされた制服の変わりに干してあった洗濯物のTシャツと短パンを身につけた京助に緊那羅が言う
「緊那羅が義兄様甘やかすからいけないんだよ」
慧喜が言う
「…慧喜ほどではないと…;」
悠助を一向に放そうとしない慧喜を見て緊那羅がボソッと言った
「浴衣着ていこうかな~」
悠助が心はすっかり祭りですというカンジで言う
「浴衣?」
慧喜が悠助に聞く
「うん!! 慧喜も着たいならハルミママに言ってみる?」
悠助が慧喜を見上げて言った
「うん!!」
慧喜が悠助を抱きしめる
「楽しそうだっちゃね」
緊那羅が京助の脱いだ靴下と制服のワイシャツを手に持って立ち上がった
「楽しくなきゃやらんて」
京助が新聞を広げて言う
「楽しいよ~! 僕今年から神輿担げるんだ~」
悠助が言うと緊那羅が微笑んで茶の間から出て行った

「…ずるいですわ」
洗濯機に京助の脱ぎ捨てた靴下とワイシャツを入れていた緊那羅が背後からのオドロオドロした空気に身をすくませた
「ひ…ヒマ子さん?;」
振り向くとソコには柱の影から顔をのぞかせた真夏の妖精ヒマ子 (年中咲きっぱなし)
「本当なら!! 本当なら私が!! 私がその京様のお脱ぎになった衣類を洗濯して! 着せて!! 膝枕等をいたしますのに!!」
ヒマ子が葉を上下に振って言う
「や…あの…私はただ…;」
緊那羅が困ったように両手を振った
「ただなんですの!? しかも緊那羅様ったらここ数日夕食前になると外出なさって帰宅時はいつも京様とご一緒じゃありませんこと?!」
葉を緊那羅にずいっと突きつけてヒマ子が言う
「それは…;」
緊那羅が後ろに反りながら苦笑いをする
「キ------------------------!! 夏は私の季節なんですのよ!?」
何処から取り出したのか可愛らしいワンポイントの刺繍がしたハンカチを噛んでヒマ子が叫ぶ
「……;」
もはやこうなってしまっては手に負えないと察した緊那羅はただ黙ってハンカチを今にも破りそうな勢いで噛むヒマ子を見ていた
「私がッ! 私が緊那羅様のような人間でしたらこうはいかなかったですわ!! ええ! そうですとも!!」
ヒマ子が緊那羅に言う
「…え?」
その言葉に緊那羅が止まった
「私…みたいな…?」
緊那羅が聞き返した
「そうですわ! 不利ですわ!! 明らかに私の方が不利ですわ!!」
ヒマ子が葉で緊那羅をペシペシと叩きながら言う
「…私…の様にはならない方がいいっちゃよ」
緊那羅がヒマ子の葉を軽く掴んで呟いた
「…きっと私の様になりたいなんて思わない方がいいっちゃ…」
そして顔を上げた緊那羅が泣きそうな笑顔をヒマ子に向けた
「…緊那羅様…?」
葉を放されたヒマ子が緊那羅を見る
「それにヒマ子さんは今のままの方が私は好きだっちゃ」
さっきとは打って変わっての笑顔を緊那羅がヒマ子に向けた
「な…なんですの!?; いきなり何を…!;」
ヒマ子が照れたように慌てて緊那羅から放れた
「何騒いでんだお前らは;」
肩にバスタオルを担いだ京助が洗面所の暖簾を上げて顔を出した
「京様---------------!!」
途端に上がるヒマ子の歓喜の声
「やかましい; …風呂はいりたいんだけど」
脱衣籠を出してバスタオルをその中に入れた京助が緊那羅とヒマ子を見た
「私に構わずどうぞお脱ぎになってくださいませ」
ヒマ子が京助のシャツに手をかけた
「俺が構うんだよ; 出てけ;」
京助がヒマ子の引っ張っていたシャツを逆に引っ張ってヒマ子の背中を押した
「んもう京様ったら照れ屋さんなんですから」
ヒマ子が京助に向けて投げキッスをした
「…照れ屋なら皆がいる前で着替えたりしないと思うっちゃ;」
閉められた洗面所の戸を見て緊那羅が呟いた