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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第七回・禄】祭男爵奇談

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「凄い凄い!!」
青いTシャツを着た宮津が黒い和笛を片手に手を叩く
「ほぉ~…いい音出すな」
白髪の男性教員が感心した声を出した
「ね? 石塚先生凄いでしょ?」
赤い顔をして和笛を握り締めた緊那羅の肩に手を置いて宮津が石塚先生に笑顔で言った
「笛は自分で?」
石塚先生が緊那羅に聞く
「あ…えと…迦楼羅から…;」
緊那羅が慌てて答えた
「君の腕も大したものだがそんな君に教えたその迦楼羅とか言う人も凄いんだろうな」
石塚先生が頷きながら言った
「そういえば君の名前はまだ聞いてなかったな。俺はここで音楽を教えている石塚というものだ」
石塚先生が握手を求めるように右手を差し出して名乗る
「あ…私は緊那羅…だっちゃ」
その手を握り返して緊那羅も名乗った
「にしても金名さん…ラムちゃんでいい? ラムちゃんってここの生徒じゃなかったんだね」
宮津が緊那羅にささやいた
「あ…うん;」
緊那羅が苦笑いを宮津に向けた
「きなさい皆に紹介するから」
石塚先生が手招きをして緊那羅と宮津を呼んだ

「はいこれ京助と坂田達の分」
阿部が綺麗に畳まれた色とりどりの半纏を四枚京助に手渡した
「ヒョー!! 来た来たッ!! コレ見ると祭り~! って気分になるよなぁ」
中島が一番上の半纏を手にとって広げる
「何を言う!! 俺等は年中脳内お祭り精神だろう!!」
南が中島に突っ込みながら言った
「そうだ!! お祭りファイヤー!!」
坂田が鳴子を高らかに掲げて叫んだ
「ファイヤ--------------------------------------------!!」
坂田につられたのか祭りのせいでテンションが高くなっているのか半纏を着込んだ男子が声を合わせて叫んだ
「祭りばんっざいッ!!」
「イェ-----------------------------------------------イ!!」
京助も言うとそれにまたも男子生徒が続いて叫んだ
「ヨシ!! 気合は合格!! 早速はじめるよ!!」
いつもの気合の入った女性の声が体育館に響いた
「いくぜ------------------------ぃ!!」
一人の男子生徒がが叫ぶと男子生徒全員が声をあげ一斉に走り出して踊りの開始位置に立った

【燃焼系アミノ式】の文字が書かれた段ボール箱に油性マジックで書かれた【ヨサコイ備品②】の文字を外側にして坂田がトラックの荷台にいた男子生徒に手渡す
「コレで最後だな」
男子生徒がそう言って段ボール箱を重ねた
「じゃ今日は夜に備えてコレで解散! 夜宮だからって浮かれて怪我しないように」
女性の声に各々返事を返して男子生徒が散っていく
「いや~…腹減った」
京助が伸びをして言う
「帰りになんか買ってく?まだまだ夜宮開始時間には結構あるし」
南が自転車置き場から愛車【ニボシ】に乗ってやってきた
「今日の予定~提案あるヤツ挙手」
中島が言う
「まずはとりあえず京助ン家いって…今日は本殿前で一回踊るのに7時集合だろ? それまでは…やっぱ京助ン家?」
坂田が京助を見た
「ヘイヘイ; まぁウチに来たって準備手伝わされたりする可能性が大きいぞ?」
京助がヘッと笑って言う
「なんたっていつも手伝ってる緊那羅…アレ? 緊那羅は?」
京助が姿の見えない緊那羅を探してあたりを見渡した
「あ、いたいたアソコ」
南が指差した体育館の方を見ると緊那羅が誰かに手を振って小走りでやってきた
「お疲れさん」
坂田が緊那羅に言う
「あ、うん」
緊那羅が笑顔で返事をした
「靴持ってきてやったからこっから履いて帰るべし? スリッパソコにおいて」
京助が緊那羅の靴を置いた
「ありがとだっちゃ」
緊那羅はその靴を少しよろけながら履くと爪先をトントンとして足にあわせる
「なんつーか…溶け込んだな緊那羅」
坂田が緊那羅に言った
「よかったじゃん」
京助が笑いながら言う
「前に来た時はただ京助について歩いてただけだったしな」
中島が歩き出した
「学校って…なんだか楽しいっちゃね」
緊那羅が体育館を見上げて言う
「勉強さえなきゃな」
京助が言うと3馬鹿が【まったくだ】という感じで頷ずくと正午を告げるサイレンが正月町に鳴り響いた
「ひ~る~」
そのサイレンにあわせて坂田が叫ぶ
「は~らへ~り~!!」
それに京助も続く
「…やっぱ何か買っていかね?;」
中島が自分の腹を押さえて【ちょいと】という風に手で合図する
「じゃ梅田商店に寄りますか」
京助がTシャツの袖を捲り上げて肩を出しながら言った

バサバサと白い布が青い空に靡く
「…遅いな…」
低くも高くもない声で誰かが呟いた
白く靡いていた布から黒い手がスッと伸び指で宙に何かをなぞるとまた白い布に手を隠す
宙に生まれた黒い玉が何かを探すように飛んでゆく
風に乗って聞こえてくる演歌がかすれかすれに正月町に響いていた