【第七回・禄】祭男爵奇談
「今日のアレも宝珠だかいうソレの力なのか?」
3馬鹿と別れた帰り道で京助が緊那羅に聞いた
「アレ?」
緊那羅がきょとんとして聞き返す
「なんつーか…海?; 海っていうか…港にいるような…」
京助がどもりながら言う
「…わからないっちゃ; …そう…なのかな;」
緊那羅が右腕についている宝珠を見た
「わかんねぇって…自分で持っててわかんねぇのか?;」
京助も宝珠を見た
「うん;」
緊那羅が苦笑いをする
「…で? どうすんだ?」
「へ?」
京助が聞くと緊那羅が素っ頓狂な返事をした
「お前誘われたんだろ?笛吹かないかって」
京助が言うと緊那羅が思い出したように『ああ!!』という顔をした
「丁度いじゃん」
「え?」
京助が笑った
「吹きたかったんだろ? 笛」
足を止めて京助が言う
「でも…」
緊那羅が俯く
「やりたいことはやるべし!! やらずに後悔よりもやって後悔の方が何となく俺は好きだ」
京助が言った
「…何だっちゃソレ;」
緊那羅が呆れ顔で京助を見た
「俺の考え」
京助がヘッと笑う
「ま…お前がやりたいならやればってことだ」
そう言うと京助がまた歩き出した
「いいんだっちゃ?」
緊那羅が少し大きな声で聞く
「お前がやりたいなら俺は止めねぇし?」
歩きながら京助が言う
「…吹きたいんだろ」
歩きながら振り向いた京助が笑いながら言った
「…うん!」
緊那羅が強く頷く
「京助!」
遅れていた距離を駆けて緊那羅が京助に追いつく
「ありがとうだっちゃ」
そして満面の笑みでお礼を言った
「…何が;」
どうして緊那羅がお礼を言ったのかわからない京助が聞く
「何でもだっちゃ」
緊那羅が嬉しそうに笑って石段を駆け上った
「あ、おかえり京助~緊ちゃんも」
茶の間の戸を開けると慧喜の膝に上半身を預けた悠助が言った
「…なんだっちゃソレ…」
テーブルの上におかれたピンクの紙で作られた花が三枚ずつついた緑色の棒飾りを見て緊那羅が聞く
「コレは祭りの時に玄関ントコに飾る花」
ヒョイとソレを持ち上げて京助が緊那羅に言う
「…コッチは?」
そしてその隣に畳まれていた濃い紫色の布を指差す
「コレも玄関に飾るヤツ」
京助が言う
「いろいろあるんだっちゃね」
緊那羅がしゃがんで棒飾りをまじまじと見る
「準備もイロイロあるけど当日とかもイロイロあるんだぞ」
京助が座って靴下を脱いだ
「京助臭い~」
悠助が脱ぎ捨てられた靴下を見て言う
「ウ~ラウラ」
そんな悠助に京助がわざと靴下を近づけた
「義兄様汚いッ!;」
慧喜が悠助を庇いながら言った
「…イロイロってたとえば何があるんだっちゃ?」
緊那羅が京助の靴下を片方拾いながら聞く
「緊ちゃん汚いよう;」
悠助が緊那羅に言うと緊那羅が苦笑いを返した
「後で手、洗うっちゃ」
京助に手渡されたもう片方の靴下を畳み込んで緊那羅が言う
「神輿あり~の旗持ちあり~の…後はヨサコイだろ~鼓笛隊に~…天狗行列に漁業青年部の何か出し物とか宝引きとか…」
京助が【イロイロ】を指折り上げていく
「沢山あるんだね」
慧喜が悠助の頭に顎を乗せながら言う
「僕のうちにも旗が立つんだよ~おっきなの」
悠助が楽しそうに言う
「まぁウチも一応神社だしな」
そう言いながら京助は制服を脱ぎ始めた
「お店屋さんも沢山来るんだ~! 僕クレープと綿飴と型抜きやるんだ~!」
悠助が笑う
作品名:【第七回・禄】祭男爵奇談 作家名:島原あゆむ