神々と悪魔の宴 ①<悪魔のささやき>
神々と悪魔の宴 ①
<悪魔のささやき>
『ねぇ、だから言ったでしょう。永遠の命なんて願わない方が良いって。同じ願いを口にした人は大勢いましたが幸せになった人なんていなかったのですよ。おとぎ噺にも良くあるじゃないですか』
サバンナで時々見かける岩場。十数頭のハイエナによってその袋小路に追い込まれたオレの前に現れて悪魔は言いやがった。
凶暴な顔をしたハイエナ達の上に、フワリと浮んでいるように見えるヤツの声は、まるで耳元で囁く様にオレの頭の中に響いてきた。
オレの方はと言えば、だらだらと血が滴り落ちる左腕は、肉をハイエナに食いちぎられて骨まで見えている有様だ。
「貴様、わざとこうなる様に仕向けたんだろう?」
オレはまことに頼りない棒切れを振り回しながら答えた。もちろんヤツの顔なんか見る余裕は無い。まぁ、見なくても忘れようも無いのだが……。
もう何年も前の事だ。ヤツは野心に燃えて事業に励んでいたオレの前に突然現れて、三つの願いと交換に魂をよこせと言いやがった。そして事業でなかなか結果を出せないでいたオレはすぐに飛びついたのだった。
永遠の命と金。
自分の商売の才能には自信があったのだ。足りないのは少ないチャンスを待つ時間と、巡って来たチャンスに参加する為の資金だった――。
とりあえず二つをオーダーし確かにそれは手に入った。
しかし、悪魔のやることだ、旨く行くはずなど無かったのだ。
新築した豪邸には強盗が入り、家族は皆殺しにされた。
又、幾つかあるオレの子会社はオレの親友たちの事業を乗っ取り、商店を営む親戚は我グループが経営する大規模商業施設の為に苦しめられ自殺に追いやられた。
そして今。商用で訪れたアフリカの地で、悪魔の狡猾な罠に嵌ったオレはハイエナ達の餌食になろうとしているという訳だ。
永遠の命がどこまで通用するか知れないが、生きていたとしても、こいつらに食いつかれたらボロ雑巾のようになるに違いない。それはゾンビのようなものかもしれない。
いや、骨まで食い尽くすと言われるハイエナの事だ、小指の骨一本でさえ残さないだろう。
<悪魔のささやき>
『ねぇ、だから言ったでしょう。永遠の命なんて願わない方が良いって。同じ願いを口にした人は大勢いましたが幸せになった人なんていなかったのですよ。おとぎ噺にも良くあるじゃないですか』
サバンナで時々見かける岩場。十数頭のハイエナによってその袋小路に追い込まれたオレの前に現れて悪魔は言いやがった。
凶暴な顔をしたハイエナ達の上に、フワリと浮んでいるように見えるヤツの声は、まるで耳元で囁く様にオレの頭の中に響いてきた。
オレの方はと言えば、だらだらと血が滴り落ちる左腕は、肉をハイエナに食いちぎられて骨まで見えている有様だ。
「貴様、わざとこうなる様に仕向けたんだろう?」
オレはまことに頼りない棒切れを振り回しながら答えた。もちろんヤツの顔なんか見る余裕は無い。まぁ、見なくても忘れようも無いのだが……。
もう何年も前の事だ。ヤツは野心に燃えて事業に励んでいたオレの前に突然現れて、三つの願いと交換に魂をよこせと言いやがった。そして事業でなかなか結果を出せないでいたオレはすぐに飛びついたのだった。
永遠の命と金。
自分の商売の才能には自信があったのだ。足りないのは少ないチャンスを待つ時間と、巡って来たチャンスに参加する為の資金だった――。
とりあえず二つをオーダーし確かにそれは手に入った。
しかし、悪魔のやることだ、旨く行くはずなど無かったのだ。
新築した豪邸には強盗が入り、家族は皆殺しにされた。
又、幾つかあるオレの子会社はオレの親友たちの事業を乗っ取り、商店を営む親戚は我グループが経営する大規模商業施設の為に苦しめられ自殺に追いやられた。
そして今。商用で訪れたアフリカの地で、悪魔の狡猾な罠に嵌ったオレはハイエナ達の餌食になろうとしているという訳だ。
永遠の命がどこまで通用するか知れないが、生きていたとしても、こいつらに食いつかれたらボロ雑巾のようになるに違いない。それはゾンビのようなものかもしれない。
いや、骨まで食い尽くすと言われるハイエナの事だ、小指の骨一本でさえ残さないだろう。
作品名:神々と悪魔の宴 ①<悪魔のささやき> 作家名:郷田三郎(G3)