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妖怪たちの八百万

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第二話『 』


近頃この辺りでは高校生が正体不明の何者かに襲撃されるという事件が二件立て続けに起こっている。幸い未だ死者はでていないようだが、被害者はどちらも入院を必要とするほどの怪我を負ったらしい。テレビでは連日関連ニュースが流れ続け、人々の噂が尽きることはない。僕は噂に敏感な方ではないが、これだけ多くの人が同じ事柄に対して囁けば自然と現状を把握し得るだけの情報を手に入れることはできていた。

噂では被害にあった高校生は二人とも同じ高校の生徒だったという。さらにそのどちらもが同じクラスだという話まである。これについては噂とはいうものの被害者を出した高校が僕が通う高校と地理的に近いこともあり、ほぼ事実と考えてもよいだろう。

それよりも奇妙なのが被害者達が犯人を形容する際に使用する言葉が一致しているということだ。彼らは自分を襲った物を『化け物』と呼んだ。曰く、天を仰ぐ双角。曰く、暗闇で光る赤い目。いずれにしろ一般的な人間を指すときに使う言葉ではない。

では、被害者達が見たものは何なのか。人間ではなさそうだとするならば一体何が当てはまるのか。まさか本当に化け物に襲われたとでも言うのだろうか。そんなはずはない、と数日前の僕なら言ったんだろう。今でもそう言いたいけれどそうも言えない具体例が身近に存在している。

環。人智を超えるその能力。燃え盛る炎の尾を持ち、その尾で火炎を自在に操る。僕が獏に記憶を喰われそうになっていたところを助けてくれた妖怪だ。つい先日、僕は環との出会いを通して妖怪の存在を知ることとなった。

僕を助けた荒っぽい妖怪に僕以外の人を助ける意思はあるのだろうか。そもそも何故僕を助けてくれたのか。僕はテレビから流れるローカルニュースに耳を傾けながら、ソファーに陣取る妖怪を見る。環の視線はディスプレイに向いていた。
作品名:妖怪たちの八百万 作家名:虎渕