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激しくも生き、されど終焉は … 穏やかに

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 高見沢は妄想の余韻の中で、ふらりと祇園へと出て行った。
 八坂神社へ通じる四条通りは、休日なのか人で溢れている。流行を追った若い女性たちの賑わいがある。高見沢はそんな中をぶらぶらと歩く。そしてふと感じる。
「おっとちょっと変だなあ、これ一体どういうことなんだろうか? どの女性を見ても、全部村山たか女に見えてくる。たか女たか女とここ三ヶ月オッカケに没頭してきたからかなあ。俺の精神状態はちょっとヤバイ?」

 高見沢とすれ違って行く女性。そして追い越して行く女性。彼女たちはいろいろだ。
 街角で誰かを待っている女性。スマホ画面を人差し指でスリスリしながら歩いて行く女性。カッコ良く気取って足早に歩いて行く女性。いろんな女性がいる。
 そしてよく眺めてみると、若い女性の他に、中年の女性も老いた女性も一杯いる。
 しかし、奇妙な事に……、どの女性を見ても、それぞれの年代の‘村山たか女’がそこにいるのだ。

 高見沢は、不思議な感覚で、視界の中の女性一人一人を観察してみる。そして高見沢は、それがどういうことなのか、なんとなくわかってきた。
「あそこで微笑んでいる若い女性は、直弼の、少年の心を揺さぶった頃の侍女、たか女。あのキラキラと輝いて澄ましている女性は、鬱々とした直弼を射止めた頃のたか女かな。そして恋人にぶら下がるように歩いて行く女性は、長野主膳と狂おしく絶頂を貪った頃の、いかにも危険な色気があるたか女か」
 高見沢は辺りをさらに注意深く眺めてみる。
「それに疑い深そうに商品を見入っている中年の女性は──、女スパイとして暗躍していた頃のたか女。そして道路向こうで、遠くの空を懐かしむように見つめている老いた女性は──妙寿、たか女」