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お下げ髪の少女 前半

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 扉は間もなく全開に戻った。しかし、少女は乗らなかった。そっぽを向いた。そのとき、ドアは音をたてて閉まった。
 その夜。自分の部屋で緒方は泣いた。こんなに好きなのに、嫌われていたことが判った。ショックだった。いつも、彼女の面影と共に暮らしていた。思い出して彼女の絵まで描いていた。それなのに……。

                  *

 その二日後、驚くべきことが起こった。電車に少女の姿がなかった。書店で遭った翌朝は、彼女を見ることができた。緒方はずっと読書しているふりをしながら、眼が合わないように注意しながら、少女を盗み見ていた。しかし、彼女の姿が今日はない。もう、ほかの車両に乗ることにしたのだろうか。
 緒方は立ち上がり、電車の振動のせいもあってふらふらしながら、後ろの車両まで歩いた。扉を開け閉めする音が大きくて、迷惑そうな視線が集まる。だが、その車両にも、その後ろの車両にも、少女の姿はない。
 六両編成の最後尾まで移動したのだが、緒方はついにあの少女を見ることができなかった。ひどく落ち込んだ気持ちで、彼は改札を通った。