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お下げ髪の少女 前半

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「川端康成だって、生れたときはオギャアと泣くだけだったと思うよ。その彼が大成したのは、血の滲む努力をしたからだよ。生まれた瞬間から特別の能力があったわけじゃない」
「天性のものはあった筈だ。そういう人間が努力したから良い結果が出た」
「どっちにしろ、努力を開始してみることだ。何もしないよりはいいと思うよ」


 小説の書き方を、独学でマスターしよう。夏の終わりの或る日、そう思った緒方は、学校からの帰り道にある、少し大きな書店に立ち寄った。詩集のコーナーで、ふと、気になった詩人の名前。アポリネール。彼はその詩集を立ち読みしていた。
「すみません。その詩集、買うんですか?」
 斜め後方、すぐそばからの、その少し鼻にかかった可愛い声。見なくてもあの、お下げ髪の少女だと、緒方にはすぐに判った。緒方は横目にその顔を見た。見ないではいられなかった。見るとやはり、とんでもなく、可愛い。どきどきしていた。
 即座にその本を買いたくなった。買えば少女との繋がりができるような気がした。だが、買わずに譲れば良いと気付いた。
 喉が渇いていた。ことばが出ない。変な声が出そうな気もする。緒方は黙ったまま、詩集を棚に戻し、うろたえながらそこを離れた。彼は随筆のコーナーに移動し、小説を読んだことのある作家の、エッセイ集を取ってレジへ行った。