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お下げ髪の少女 前半

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「もう、行きたくないですね。兄に連れられて行ったんです」
「彼も?そうなんですか。全然知らなかった」
「兄を責めたりしないでくださいね……あのとき、わたし、緒方さんを想い浮かべていました」
 どうして思い浮かべたのか、緒方は聞きたかった。
「こら!休憩ばかりしてたら日が暮れるぞ。俺は頂上まで行って引き返して来たぞ。お前たち愚図だなぁ」
 緒方はびくっとした。二十メートルほど上からの、美緒の兄の声だった。

                *

 そこは標高千メートルを超える地点だった。比較的平らな場所が広がっていた。そこに四人用のテントを設営すると、瞬く間に美しい夕焼けが色あせて行った。
 テントの中での夕食はインスタントラーメンと、質素だったが、緒方は同じ鍋から美緒と一緒に食べたので、あのときの水炊きを思い出して嬉しかった。インスタントラーメンが、こんなに美味いものだったのかと、彼は感心した。