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お下げ髪の少女 前半

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「違います。でも、自分の命を落としても人を救う。そういう考えができるキリスト教徒を尊敬しています」
「それなら、ベトナムのことも気になってますね」
「そうなんです。哀しいことですね。神様はなぜ、何もしてくれないのか、って思っています」
登りが急になった。土と岩角が相半ばする路になってきた。美緒は歩き辛そうだ。
 手を引いてあげたい気持ちだが、緒方にそれはできない。
頭上の樹木の隙間に上空を滑空して行く鳶らしい鳥影が見えた。
「この傷跡、機動隊にやられたんです」
云ってしまった。飲んで走って転んだことは、勿論云うつもりはない。
「わたしも、機動隊員にお尻を触られました」
緒方は足を止めて振り向いた。
衝撃と戦慄が時を止めた。信じられない話だった。美緒は涙を浮かべていた。
「美緒さんもデモに参加したんですか?!」