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お下げ髪の少女 前半

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バスから降りた杉原は、どんどん先へ行ってしまう。いつものことだった。緒方にはとても追いつけるような速さではない。
お兄ちゃーん、と美緒は呼んだが、兄は歩調を緩めなかった。見知らぬ登山者たちも、
その道のスペシャリストらしく、速い人ばかりだった。
緒方と美緒も急いで歩いて行く。まだ路が広いので、二人は肩を並べて歩いて行った。
かなり急いだつもりだったが、気が付くともう、周囲に人の姿はなかった。緒方は緊張していた。次第に気持ちが暗くなってきた。
異性とこうした状況に置かれたのは、生まれてから二度目の経験になる。「文通ごっこ」をした、あの晩が初体験だった。
「お嬢さん、恐縮ですが質問にお答えください」
芸能リポーターが、手にマイクを持っているのを真似て云った。
「はい?」
美緒は微笑んで、眼を輝かせている。