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お下げ髪の少女 前半

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「そうでしたか。向こうは九月からでしたね」
緒方は美緒からの嬉しい情報によって、眼の前が俄かに明るくなったような気がした。実際のところ、雨が小降りになり、空も明るくなっていた。
幾つもの駅を過ぎて登山口の駅に着いた。三人で立ち食い蕎麦を食べた。美緒は緒方の蕎麦に薬味をかけてくれた。
「なんだよ。兄貴を差別するわけ?可愛くない妹だね」
「はい、お兄ちゃん」
緒方がかけてあげた。美緒はおかしくてたまらないといった様子だ。
間もなくバスに乗り込んだ。次第に天候は好転し、雲が薄くなって行く。
三人が乗車したバスは空いていた。全部で十人程度しか、登山者は乗っていない。急カーブの多い道を、バスはゆっくりと、悲鳴を挙げながら登って行った。登山口の峠には、朝の陽射が訪れていた。何か叫びたいくらいに気持ちの良い、爽やかな風が吹いている。
野鳥のさえずりがうるさいくらいだった。