お下げ髪の少女 前半
「大人の猫だったらどこからでも自分でおりられますから」
ずっと笑顔だった。
「つい最近、拾ってきた子猫なんです。誰も知らない筈だったので驚きました」
「こいつに嘘は通用しないぜ。覚悟しておけ」
兄は苦笑している。
「浮気なんかすぐバレますよ」
と、美緒。笑っている。
朝から気分がほぐれているので、緒方は益々嬉しくなった。
美緒が云った。
「雨男は誰ですか?」
はーい、と云って緒方は手を挙げた。
「そうそう、交換留学おめでとう」
美緒は眼を大きく見開いてから、再び微笑んで応えた。
「来年の九月ですけど……ありがとうございます」
作品名:お下げ髪の少女 前半 作家名:マナーモード