お下げ髪の少女 前半
「嘘だろう!そんな話、全然聞いてないぞ!ばかなこと云うなよ」
「俺は杉原から聞いたんだぜ。嘘なんかじゃないよ。俺は完全にふられたけど、あの可愛い顔が見られなくなるのは、やっぱり寂しいなぁ」
「……」
美緒の兄が、嘘の情報を流すとは考えられなかった。美緒の英語の成績が群を抜いて良いらしいことは、緒方も聞いていた。それを聞いて緒方は、英語の学習教材を購入し、勉強を始めたのだった。美緒と英会話をしたかった。
小泉の家に小宮が突然来た。彼はウィスキーの瓶を持って来た。上機嫌だった。
「おう、輸入物だな。高かっただろう。あっ!パチンコの景品か。何発出したんだよ」
小泉が云った。
「ところがこれは、ロハよ。昨日の俺の誕生日に、彼女からのプレゼント。恵まれない学生運動家諸君に、幸せのおすそ分けっちゅうわけよ」
夜遅くまで三人で飲んだ。緒方は初めての酒だった。そして、初めてのやけ酒だった。
作品名:お下げ髪の少女 前半 作家名:マナーモード