お下げ髪の少女 前半
アメリカの爆撃機は日本で弾薬を補給している。その弾薬で罪のない同じアジア人のベトナムの子供たちが、女性たちが、老人たちが、毎日のように、殺されている。日本から飛来した爆撃機の無差別絨毯爆撃によって命を奪われている。
米軍基地の周辺を、機動隊に包囲されながらデモ行進した。
「おい、元気がないぞ!お前のようなへなちょこがこんなところに来るんじゃねえ!」
緒方は機動隊員に顔を殴られた。凄い衝撃だった。その力は父の比ではなかった。顔から出血したが、それでも泣いたりはしなかった。
「暑かったけど、成田の方が良かったな。ジャガイモを植え付けただけだからな」
それはデモに参加して数日後の日曜日だった。成田空港の建設に反対する組織のシンパとして、やはり小泉に誘われて参加したのだった。どういう関係から参加したのかは不明だったが、空港用地に残っている畑で、一緒に植え付けをした少女が居た。
少しだけ、美緒に似ていた。
「お前さぁ、美緒ちゃんが交換留学生として渡米する話は勿論知っているんだろう」
緒方は突如、奈落に墜ちる想いだった。機動隊員に殴られたときのように、ショックを受けた。
作品名:お下げ髪の少女 前半 作家名:マナーモード