お下げ髪の少女 前半
緒方は奮起して最初から電子工学の勉強を始めたが、初歩的なところで挫折し、先へ進むことができない。成績の良い小泉に救助を求めた。
「ほかの業種を考えてみろよ。体質的に電気関係は向いてないんだ」
小泉の部屋でのことだった。かなりの書物が、狭い部屋に積まれていた。二時間程、基礎を教えてもらったが、やはり徒労だった。
「無理だな。卒業もできないかも知れないな」
緒方はため息交じりに云った。
「卒業はさせてくれるだろう。何回か追試を受ければ大丈夫だよ。いくら赤点だらけだって、学校側は卒業してもらわないと困るんだ」
夕焼けが窓の外にひろがっていた。涼しい風が入って来た。おかしな抑揚をつけて、カラスの乾いた声が執拗に続いている。
「この前のデモはどうだった?」
小泉は話題を変えた。
不採用の通知を受け取った翌日、緒方はアメリカ軍のベトナムへの攻撃に反対するデモに、小泉に誘われて参加した。
作品名:お下げ髪の少女 前半 作家名:マナーモード