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お下げ髪の少女 前半

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第5章 暗いトンネル



 美緒は学業成績が優秀な少女らしい。クラス委員に選ばれたのも、その事実と無関係ではないだろう。それを知ると、劣等生の緒方にとって、彼女は遠い存在に感じられた。美緒は高い崖の上の、美しい花なのだ。
 余りにも清らかなそのまなざしが、緒方の心には焼き付いていた。
 電車の中では、やはり話しかけることができなかった。
 緒方の顔の痣を見て、美緒は心配そうな表情を見せた。緒方は見られたことが恥ずかしかった。彼は殆ど絶望的な気持ちになっていた。
 だが、或ることばが心の支えになっていた。
「大人になったらよろしくお願いします」
 美緒が便せんに書いたそのことばだけが、一縷の望みだった。
 緒方は就職試験に落ちた。不採用の通知がきたのは、或るオーディオメーカーからだった。