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お下げ髪の少女 前半

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 美緒のまぶたから、涙が溢れ出しそうになっている。緒方の胸の奥も熱くなり、美緒と同じ状態になった。緒方の眼の前にあるのは便せんだった。スヌーピーのイラストつきである。
「どっちが先に書きますか?」
 緒方はなぜなのか殆ど泣きそうになりながら尋ねた。
「わたしから書きます。時計を見ていてください。制限時間は……一分にしましょう」
「一分ですか!それは忙しい文通だ」
 美緒は左手で便せんを隠すようにして書き始めた。
 一分が過ぎた。
 美緒は左手の人さし指を口の前で立て、黙ったまま便せんを緒方の前に置いた。彼女は明らかに泣いていた。
「兄をよろしくお願いします。いつまでも、良い友達でいてくださいね」
 それが最初の手紙だった。そうではないと、緒方は思い直した。初めてではなかった。アポリネールの詩集に挟まれていた、あの手紙があった。角ばった文字は、勝気な性格を想わせた。だが、美緒は便せんに、涙の雫を落としていた。