お下げ髪の少女 前半
「いいですよ。そういうのは。今ここでしたいんです」
「今?ここで?……面白いですね」
「面白いでしょう」
美緒は幼い少女のように笑う。
「そういうの、流行ってるんですか?」
「たった今から、ここだけで流行るんです」
「美緒さんって……」
「おかしいと思いますか?」
「想像していたより……」
「頭が悪い」
「そんなことはありませんよ。頭が悪いのは僕の方です」
「緒方さんは頭がいいですよ。小学校のとき、その学校でただ一人、数学の大学受験問題ができたって、兄から聞きましたよ」
「あいつ云ったんだ。あれはね、たまたま極端にひねった問題で、僕みたいなひねくれ者に合っていただけです」
「違います。緒方さんはひねくれ者なんかじゃありません。はい」
作品名:お下げ髪の少女 前半 作家名:マナーモード