お下げ髪の少女 前半
「あら、仲いいわね。二人でやれば早いのかしら。緒方くんも飲んでね」
「美緒さん。僕がやりますから」
グラスに冷蔵庫の氷を入れて出すくらいは緒方にもできた。緒方は飲まなかった。
飲み慣れていないせいだろう。美緒の兄は十分もしないうちに眠くなったと云い、また二階へ行ってしまった。
あと片づけを二人でした。二階で飲んで来たらしいという推察が一致して、二人で笑った。漸く緒方の胸に、圧倒的な幸福感が押し寄せていた。
そのあと、美緒がコーヒーを淹れるというのを緒方は制した。
「コーヒーに関してはプロですよ。あちらでお待ちください」
緒方が二人分のコーヒーを居間へ持って行くと、ソファーに座っている美緒が、
「緒方さん、文通しませんか?」
緒方は驚いていた。美緒は緒方を隣に座らせようとしたが、彼は向かいの席に座った。
「文通ですか?」
「だめですか?」
「経験がないんです。最初は拝啓でしたっけ。それとも、前略?最後が敬具か、草々?それとも、かしこ?」
作品名:お下げ髪の少女 前半 作家名:マナーモード