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お下げ髪の少女 前半

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緒方家のような旧い安普請とは異なり、杉原の家は建てつけがよいので、台所での会話は断片的にしか聞こえなかった。「水炊き」、「カレーライス」ということばが、緒方には聞こえたような気がした。
間もなく杉原が戻ってきた。
「聞こえたか?今日は水炊きで明日はカレーライスだ。緒方さんは歓迎らしいな」
「僕がきていること、知ってた?」
「あいつが塾から出て電話してきたとき、おれが教えておいたんだ」
 今から二十分くらい前に、杉原は慌てて階段をおりた。あのときのことらしい。
「家に連絡しろよ。お前の分も用意してるんだ」
居間にある電話で緒方が自宅の母に外泊を伝えると、間もなく食堂での食事になった。
緒方は極度に緊張し、何を食べているのか判らなかった。
やがて杉原は中座した。緒方は美緒とはまだ会話らしい会話をしたことがない。何を話せばよいのかが判らず、彼は黙々と食べ続けた。相性が悪いのではないかと、緒方は落胆している。もっと素晴らしく愉しい時間になる筈だったのに、あまりにも期待外れだった。
土鍋の中で時々二人の箸が接触した。
美緒も気まずくなったらしく、
「夫婦ってこういう感じなんでしょうか」