お下げ髪の少女 前半
「そうなの?地獄谷のゆで卵、食べました?」
美緒を挟んで孝子がきいた。
「……はい。三年前に……」
緒方を除く三人が笑った。
「緒方さんって、愉しいひとね。今度、横浜ドリームランドへ行きませんか?」
孝子は緒方を凝視めてそう云った。
「……二人で、ですか?」
驚いた顔の美緒の兄が、
「緒方ちゃん、四人だって、四人」
「はは、そうですよね」
四人が笑った。
「孝子、ルール違反よ。緒方さんを独占しようとしたでしょ」
「そうかも知れない。美緒、ごめんね」
孝子は悪戯っぽく笑った。それまでずっと笑顔だった美緒の表情が、その直後に陰った。緒方は不安になった。
作品名:お下げ髪の少女 前半 作家名:マナーモード