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お下げ髪の少女 前半

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「お前たちを今から連れて行くところの地図だよ。紹介するよ。こいつが緒方だ」
「はじめまして……じゃないけど、はじめまして。美緒です。緒方さんのことは兄からも、小泉さんからも、いろいろ聞いてました」
 美緒が自分を凝視めて語りかけてきたという事実に、緒方は感動していた。
「……詩集、ありがとうございました」
 緒方は自分の顔が熱くなり、足がふるえていることに気付いている。
「はい……それからこのひとは同級生の菊本さんです」
「菊本孝子です。私は美緒から、緒方さんのこと、いろいろと聞いてました」
 孝子はウインクをした。
「……そうですか。いろいろと?」
 美緒の同級生は、いくらか太めだが、愛嬌がある。四人で駅へ向かって歩き始めた。右に美緒の兄が居て、緒方の左を美緒が歩いた。緒方は自分の心臓があまりの幸福感のためにおかしくなりそうな気がした。
「菊本さん。箱根はどうでした?」
美緒の兄は緒方と美緒を挟み、笑顔のままきいた。
「凄く愉しかったです」
「そう、良かったね。おい、緒方、電池切れたか?」
「え?……菊本さん。箱根は、僕も、行きました」