お下げ髪の少女 前半
杉原の妹の、あのお下げ髪の少女は、誰が好きなのだろうか。
「おれはまたパチンコに行ってくるよ。小泉も行くか?」
「俺は今夜から喫茶店でバイトなんだ。途中まで一緒に行こう」
「サテンでバイトかよ。ウェイトレスでいいのがいたら、紹介してくれよな。ウブな緒方君にもな」
「僕はいいよ」
「そうか、美緒ちゃんに惚れてるんだったな」
「そんなこと、云ってないだろう!」
「また赤くなっちゃって。緒方って可愛いな。美緒ちゃんに取られたくないよ。じゃあな」
「おれの分まで頑張れよな。緒方。強敵が多いぞ」
「小泉まで何云ってるんだよ」
二人が去ったあと、中年の紳士を連れ、義兄の野上勝が帰って来た。
「邦彦、店番ありがとう。これが妻の弟です。どうぞ、お座りください」
「田沢です。ああ、これが邦彦さんの作品ですか。えっ?でも、これは写真でしょう」
田沢と名乗った男は、壁の絵を見て眼を丸くした。
作品名:お下げ髪の少女 前半 作家名:マナーモード