小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
マナーモード
マナーモード
novelistID. 29058
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

お下げ髪の少女 前半

INDEX|11ページ/50ページ|

次のページ前のページ
 

 店内の壁には、緒方が描いた三点の油絵が飾られていた。どれもジャズメンの写真を模写したもので、それが油絵だと気付いた人物は一人もいなかった。時々、店の客に懇願され、売却した。それによる収入で、緒方は画材やレコード、書籍などを購入した。
「昨日パチンコで一万円儲けたよ」
 そう云いながら、小宮は煙草の煙を吐いた。
「じゃあ、悪いな。俺にも一本くれる?」
 小泉がそう云うと、小宮は箱のまま投げた。
「それ全部やるよ。昨日十箱取ったからさ。緒方はまだ煙草が駄目なのか?」
「親がうるさいから駄目だよ。すぐにばれるよ」
緒方の父は昔堅気の職工だった。母は競輪場で競輪新聞を売っていた。
小宮は急に叫ぶように云った。
「そうだ!小泉。美緒ちゃんに、昨日告白したのか?」
 小宮があまりにも唐突に美緒の名を口にしたので、緒方はひどく驚いた。すぐにあのお下げ髪の少女を思い出していた。小泉が彼女に惹かれているらしいことは感じていたが、既にその想いを告白したかも知れないという情報に、緒方は驚愕した。
 しかし、小泉は肩を落とし、黙ったまま煙草の煙を、ため息と共に吐き出した。
「駄目だったんだな。諦めろよ。ほかにも可愛い子はいくらでもいるよ」
「……彼女、もしかしたら誰かが好きなのかな」
俯いたまま、小泉が力なく云った。