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表と裏の狭間には 八話―運命の文化祭―

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「……いえ、単に面白いかと思いまして。」
「そう……。」
まあいいや。
「じゃ、三百円。」
「へぃ毎度!じゃ、礼慈よろしく!」
「……言われるまでも無い。」
礼慈は厨房に戻り、理子は他の接客に戻っていった。
ちなみに。
店内の内装も店員の格好も、アルカイダとは何の関係もなかった。

某県立高校所属の鶴屋さんの店とは違って、かなり美味しかった。
肉も野菜も麺もたっぷり入れられていて、味付けもかなり凝っていた。
少なくとも麺付属のソースではないだろう。
さて。
腹が満たされたところで、次は一年二組に向かう。
そこでは輝と耀が展示会をやっている筈だ。
一年二組の前に着く。
正直に言おう。
入りたくない。
……じゃあ入るなって言うけどさ。
気になるのもまた事実なんだよなぁ……。
さて。
悩んでるのも馬鹿馬鹿しくなったあたりで、覚悟を決めて、入る。
するとそこには。
「うぉ………。」
思わず絶句する程の、膨大な資料が展示されていた。
人気は無い。
さながら美術館か何かのような静けさに包まれている。
そして、展示物が凄い。
これを正式に公表すれば現代のオタクに対する偏見を一掃出来そうなほどきちんとしている濃密な資料。
最近のメジャーな小説や漫画、アニメやゲーム等の、原作、派生、その遍歴や主なストーリー、作者や絵師、スタッフ等の詳細なデータ。
挙句の果てにはあらゆるサブカルチャーを網羅した年表まである。
待て。この年表どうやってんだよ。
文化祭の準備期間で製作可能な代物なのか?
年表に限らず、これ全部、文化祭準備期間じゃ無理だろ。
いや、一年かけても無理があるだろ。
「どうっすか?この資料。」
振り返ると、そこにはいつの間にか輝と耀が。
「すげぇよ。どうやったんだ?このレベルの展示。」
「これが僕のクラスの実力っすよ。いやーいいクラス持ったものっすねー。」
「実際はほとんど兄様と私の力なの。兄様の知識と私の情報処理をベースに、クラス総出でまとめたの。」
「情報収集は耀がやってたの!?」
「そうなんすよ。こいつ、情報収集の天才過ぎるんすよね。盗聴ノゾキハッキング、なんでもやってのけるんすよ。」
相変わらずスペックのおかしい兄妹がいた。

翌日。
午前シフトの仕事が終わり、午後はやってきた雫と一緒に文化祭を回る。
「お待たせ、雫。」
「あ、お兄ちゃん。今来たところだよ。」
待ち合わせ場所にいた雫と無事合流し、どこを回るか検討する。
「雫、どこに行きたい?」
「じゃ、お化け屋敷!」
こいつは、意外と怖いもの好きなのだ。
と、いうわけで。
昨日は行かなかった、ゆりたちのクラスへ行くことになった。

……。
一つ言わせて貰おう。
「看板から凝りすぎだ!」
「え………ここ……本当に学校だよね…………?」
二年一組前にて。
雫がドン引きする程に凝った趣向の看板が掲げられていた。
文章では絶対に表せないぞ、この感覚。
なんか、理屈とか理論とかすっ飛ばして、単純に、『怖い』。
…………。
「入るか?」
「う、うん……。」
入場料二人分を支払って入室。
……おお、真っ暗だ。
入り口の暗幕をくぐった途端、光が完璧に消えた。
「お兄ちゃん………。」
雫が怯えた様子で僕に抱きついてくる。
うん。そんなことが全く気にならない。
そしてもう一つ。
音が、ない。
全くの無音である。
何も見えず、何も聞こえない。
聞こえるのは、自分の鼓動と、雫の怯えた息遣いのみ。
「進むぞ………。」
「………うん。」
雫は腕に抱きついたままだが。うん、まあ、無理もない。
しばらく進む。進む。進む。
壁に沿って進む。
時折、突然『バタン!』と大きな音がする。
その度に雫が『ひゃんっ!』と悲鳴をあげて更に強く抱きついてくる。俺も、実は竦みあがっていた。
道が開けたと思ったら、そこは墓地だった。
あれ?作り物……だよね?
墓石に触れる。
………冷たっ!
これマジだ!
え?え?え?
ここ学校ですよね?
天井が見えないんですけど?
うっすら明るいのが逆にタチ悪い。
奥に、何かが見える。
あれは………人魂?
かなりあざとい演出で、やっと俺は、これが人工のものだと思い出――
突然背中に冷たい感触。
首に回された腕。
耳元に吹きかけられる吐息。
「うわぁああああああああああああっ!?」
思わず悲鳴をあげて振り払い、よせばいいのについついソレを確認してしまう。
「きひっ。きひひっ。いひひひひひっ!」
そこにいたのは。
裂けた口で引き攣った笑いを浮かべる、血塗れの女だった。
「きゃぁあああああああああああああああああああああ!」
「うわぁあああああああああああああああああああああ!」
俺と雫は、ついに理性が決壊し、悲鳴をあげて走り出した。
するとどうだろう。いくつもある墓石が一斉に動き始め。
その中から、腐った死体が………!?
「きゃぁああああああああっ!きゃぁああああああああああっ!!」
「うわぁあああああああああああああああああああああああ!!!」
追い討ちをかけられ、転びながら一目散に去る俺たちだった。

その後も、タチの悪い仕掛けのオンパレードで。
墓地で精神が崩壊した俺たちは、とんでもないダメージを受け。
仕掛けの詳細を全く覚えていない。
ただ、恐怖。
純粋にして膨大な恐怖を、これでもかというほど味わった。
………………。
ごめん、感想とか聞かれても、無理。
というか、今、一歩も動けない。
今は、お化け屋敷の出口と教室の出口との間にある休憩所にいる。
何でこんなところが、と思ったが、すぐに理解できた。
「お兄ちゃぁん…………ふえぇぇえん。」
「ぜぇ………ぜぇ………はぁ………。」
雫は俺にしなだれかかって泣き出してしまい、俺も膝から崩れ落ちてしまった。
なんか係員らしき先輩までいるぞこの部屋。
オイ。こんな休憩所を用意しなきゃいけないって分かってんならもうチョイ手を抜けよ。
係員の先輩は、『まあ、その、ごめんね』みたいな表情で気まずそうに俺たちから目を逸らした。
「お兄ちゃぁん………ひくっ…………怖かったよぉ………ふぇぇえん……。」
「よしよし……俺も怖かったから。それに、もう平気だからな………な?」
雫を軽く抱き締め、頭を撫でて落ち着かせる。
……お化け屋敷が意外と好きなこいつを、ここまで怖がらせるって………。
「お兄ちゃん………お兄ちゃぁん………。」
「よしよし。そろそろ落ち着いたか?そろそろ移動するぞ?」
「うん………大丈夫……。」
雫は、まだふらふらとしつつも立ち上がった。
「じゃ、どうもでした。」
「いえいえ。…………またどうぞ、とは言いたくないんですけどね。いや本当に。」
「自覚あったんですか………。」
「うん……………。流石にやりすぎだとは思ったんだけどね。」
どうせゆりが面白がって押し切ったのだろう。

「さて。何か食べるか?」
よく考えると昼飯を食っていなかった。
「うん!」
「じゃぁ……そうだな。」
外の屋台の群れにでも行くか。
という訳で、校庭に出る。
ステージでは、今日も様々なショーをやっているようだ。
今のステージは………武偵高コスプレイヤーによるアル¬=カタ?
何やってんだよここの生徒。
しかも、無駄にクオリティが高い。