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リレー小説『暗黒と日記』 第三話

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 知略の限りをつくしたじゃんけん戦は一瞬で決着した。
 いつも僕は最初にチョキを出す癖がある。自覚しているから気をつけてはいるんだけど、テンパった時ほど思わずピースサインをしてしまう。そのことを小唄や少佐は知っている。
 だから、思いっきり動揺したフリをしながら僕は「ポン!」と同時に華麗にパーを出した。僕の癖を知らないガールズは別として、これで小唄達に負けることはない。最初の攻防で精神的に優位に立てる。
 完璧な作戦だ。って……ええええぇぇぇぇぇっ!!!
 そこにあったのは、ひとつのパーとよっつのチョッキ。これは……もしかして……いや、もしかしなくても……瞬殺だった。
「な、なんで……」
「八朔は顔に出るんだよ」
 そう言って小唄が笑うと、他のメンバーも大きく頷いている。
 顔に出てた? パーの顔してたってこと? どんな顔?! パーの顔ってどんな顔ぉ?!!

「じゃあボクは待ってるから」
 リュックを背負った少佐が当たり前のようにしれっと言う。
 小唄の横に柏原がいるのは当然として、なぜか僕の右腕は少女Bによってがっちり掴まれていた。その手は相変わらず血が通っているとは思えないほど冷たくて背筋が寒くなる。「少佐と一緒に行けば?」なんて言ったら、そのまま腕を引き抜かれてしまいそうだった。
 まあ、僕が二度行くんだったら必然的にこういう組み合わせになるのか。まさか女の子だけを残して行くわけにもいかないもんな。
「で、でもさ……ひとりで待ってるのって怖くない?」
「それがいいんじゃん」
 この場に不似合いな笑顔を浮かべる少佐。わあ、この子、肝試しをエンジョイしちゃってるよぉ。
 この瞬間、僕の最終手段だった”三人で行こう計画”があっさりと崩壊した。
「あの日記でも読んで暇つぶししているよ」
 その言葉に少女の腕がピクンと反応する。

「だけど、セキュリティとかは大丈夫なのぉ?」
 少し”ぽわぽわキャラ”を取り戻した柏原が小唄じゃなくて少佐の方を見ながら問う。
「もちろん、調査済ですよ」
 フフフと不敵に笑いながら少佐がリュックから取り出したルーズリーフには、学校の見取り図が書いてあった。
「このバッテンのところは通らないで。防犯カメラがあるから。でも、入口と廊下のカメラは壊れてるから大丈夫」
 再び浮かぶ黒い笑み。ま、まさか……。
「おおっ、ラッキー!!」
 能天気に喜ぶ小唄。
「じゃあ、先に行くねぇ」
 柏原がくるりと背を向けてスタスタと歩いていく。
 視線を落とすと、ヒールでズタズタにされたエロ本の残骸があった。
「八朔達のスタートは五分後な」
 そう告げて、小唄が柏原の背中を追いかける。