リレー小説『暗黒と日記』 第三話
リレー小説『暗黒と日記』 第三話
「あはははははははははははははははははははははは」
突如として少女Bがけたたましく笑いだし、僕の鼓膜をビリビリと震わせた。
目の前で笑い続けている彼女を見つめながら、思わず後ずさりして身構える。
つ、ついに謎の少女が正体を現わすのか?!
それとも、さっきみたいな怪奇現象がまた起こるのか?!!
日本刀で胸を突き刺された少佐。噴き出した赤黒い鮮血と、虚ろに濁った瞳。
その光景が再び脳裏に浮かび、ゴクリと唾を飲み込む。
「八朔、ビビリすぎぃ〜!」
「なんつー顔してんだよぉ」
笑っていたのは少女Bだけじゃなかった。
小唄も少佐も柏原も、みんな僕を見て笑っている。
みんな、おかしいよ!
なんでこんな状況で呑気に笑っていられるの?!
僕の第六感はビービーと警報を鳴らしっぱなしだっていうのに!!!
「大丈夫だって! 八朔」
「きっと行ったら楽しいよ?」
みんなが僕を囲んで励ましの言葉を告げている。なんか僕だけがワガママを言ってるみたいだ。
そう言えば、こんな状況が小学校の時もあったな。
友達から手を差し伸べられても水が怖くてプールサイドで固まっていた僕。その背中を押してプールの中に突き落としたのが小唄だった。
あの時は(なんてやつだ!)って憤慨したけれど、今じゃクロールだって潜水だって余裕で泳げる。
小唄は「お前が泳げるようになったのは俺のおかげだ」なんて言ってたな。
おかしいのは……僕なのか?
お遊びの肝試しでビクビクしている僕が異常なの?
みんなと一緒に笑っていれば、僕も楽しくなるの?
どちらにしても、この場の空気は僕がこのまま帰ることを許してはいなかった。
観念して首を縦に動かす。
「よし! じゃあ先にじゃんけんしとこうぜ! 負けたやつは音楽室からひとりで戻るんだぞ!!」
小唄がやけに嬉しそうに宣言した。
作品名:リレー小説『暗黒と日記』 第三話 作家名:大橋零人