小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

泉の中の恋(永遠の楽園,後編)第一章

INDEX|5ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

「でも、あの事件の日は、高倉けいが、東野を殺したんですよ..」

「本当に 高倉けいは、東野を、殺害したんでしょうか。」

麻川は 確信めいた口調でそう言った。

「それは間違いない事実ですよ。東野の腹部に残っていた、包丁に高倉けいの指紋が残っていたんです。」

奈緒は3年前の、状況証拠を口にした。

「そうですか・・だけど、もし、逆に東野が証拠隠滅のために、高倉けいを殺害しようとして、なんらかの、トラブルが起きたとしたら。」

麻川は、持論を曲げない。

「世の中は、そんなにご都合主義に、事実が、曲げられるものなのでしょうか。失礼ですけど、麻川さんのおっしゃる事を聞いていると、自分のいう事は全て、正しいという感じを受けるのですが。」

奈緒は、心に溜まっていた、苛立ちを、吐き出した。麻川は、携帯口からもわかる、ゆっくりした、ため息の後、言う。

「そうです、僕のいう事はすべて、正しい。
真実の真理です。」

奈緒は、今までの疑念を吐き出した。

「麻川さんは、神なのですか。
なんで、そこまでわかるんです。
今、おっしゃったことは、事件に関する捜査陣や私たち、報道機関を、真っ向から、否定する事です。
机上の空論にしか思えません。」

薄笑いの雰囲気の後、麻川は言った

「あなたがたの、神の定理がそうなら、僕は神です。奈緒さんは、なにも言わずに僕に従っていればいいんです。
僕が間違っていたら、僕はどんな罰も受けましょう。
だけど、僕の言うことが、正しかったら・・」

奈緒は、携帯越しにごくりと、喉を鳴らした。

「奈緒さんは、ここに来て、僕のしもべになってもらいます。」

三年前のあの事件は、まったく、逆の、真実の展開で、解決に向かう。

奈緒は、寝袋より、見つかったSDカードの事を、事件担当の捜査陣に、リーク「密告」した。自分だけでは、とても、調査しきれない情報だったからだ。

それをきっかけに、次々に、3年前のあの事件は、深い霧が飛ばされ、真実の全貌が見えて来る。

永遠の楽園 を書いたのは、高倉弘だった。
高倉弘の使っていた、パソコンのメモリーの中から、毎日、少しずつ書いていた、永遠の楽園の原稿が、発見される。

ひきこもりだった、高倉弘の変わりに、東野は自分の名前で、世間に発表したのだ。
最初は、おそらく、親切心だったのだろう・・
しかし、世間で話題になり、遂にはA賞も取るだんになり、東野は、人気者になり、その生活が捨てられなくなる。
ずっと、高倉弘をゴーストライターに、する事を画策するが、高倉弘は、けいと、結婚して、しまい、自分の管轄下から、出てしまう。
これが、恐ろしい、連続殺人の、引き金だったのだ。

高倉夫妻の骨に、引きずられるようにして、次々に真実が、日の下にひきずりだされた。

先に、山中の土の中より、発見された土屋智子の骨の近くより、首を絞めたであろう、東野のネクタイが、見つかる。

そして、高倉けいの骨の近くにあった、ザイルより、決定的な、証拠が、白日の元に出る。

土屋智子の 、高倉けいあての遺書。

けい 
私は、東野さんを愛してる、心から。
だから、言えなかった、どうしても。

もう、けいは気がついているんだな、と今日のランチの時,わかりました。
私ももう隠しておくことは、できない。
けいだもん、けいだから、言えなかった。

 東野さんの作品を書いたのは、弘さんです。
東野さんは、その事実を、自分のもとから、離れて、結婚する、弘さんから、もれるのを恐れた。
そして、私に近づいた。

そして、あの日、私の目の前で、弘さんを谷底に、押した。
私が言えないのは、計算済みだったんでしょう。
身も心も、東野さんに夢中だったから。

でも、もう無理。
この事実を、胸にしまって、結婚なんてできない。

私が東野さんの罪を全部、背負うから、どうか東野さんをゆるしてください。
取り返すことができない罪なのは、わかっています。
でも、愛してしまった、命がけで。

友情をうらぎって、ごめんなさい。
今まで、ありがとう。
けいとの、日々はいつまでも、私の中にあります。

この 衝撃的な、遺書の発見によって、すべての真実は、明らかになった。
疑心暗鬼になった、東野は、すべてを焼却して隠滅を、はかったのだ。

まず、智子に近づく。
高倉弘を、事故に見せかけて、殺す。
智子を、絞殺し、埋める。

そして、あの日、高倉けいも、抹殺しようとしたに、違いない。
何らかの手違いによって、逆に殺されてしまったのだ。

すべては、麻川の言う通りだった・・

麻川の部屋に入った時、奈緒の胸の中は、大火の半鐘のように鳴っていた。

麻川は、奥の机におり、写経をしていた。
つるり、つるりと、唱えるような筆遣いの後、霊験を封じ込めたような、字が半紙の上に生まれる。

墨の匂いが、ビャクダンの香りとともに、麻川の周りをつつみ、意空間を創造していた。

奈緒は、机の上をみて、怪訝におもう。
写経の手本がない、経文も今まで、みたことがないものだ。

「こんにちわ、麻川さん。
麻川さんの推測したことは、すべて、真実となりました。
失礼なことを言って、どうもすいませんでした。」

麻川は、筆を止めず、言った。

「それで、約束を守りに来たんですね。」

「いえ、あの..」

苦しまぎれの言葉のあと、麻川を見ると、いない..
消えていた。

「奈緒さんには、ここに来て、しもべになってもらう、という約束ですよ。」

いつのまにか、奈緒の後ろから、肩を抱き、耳元でささやく、麻川がいた。

奈緒は、はぐらかそうとして、言った。

「書いていた、経典は、なんですか。
見たことがないですが。」

「これは、僕と奈緒さんだけの経典ですよ。
これから先のことが、書いてある。」

そういうと麻川は、白い蛇が、寝床に帰るように、ブラウスの間から、指を乳房に、すべりこませた。

奈緒は、白蛇に抱かれていた。

その指はするすると冷たい粘膜の感触を残しながら、ゆっくりと奈緒の身体を確かめていく。
時折、指は小さな蛇になって、チョロチョロ、小さな舌を出して、奈緒の肌を舐めるのだった。
乳首から、下腹まで、ずいぶん遠回りをして、辿りついた指は、淡い草むらの中で、その先の泉のあふれるのを待った・・

もちろんそれは、幻想なのだろう。
麻川の催眠術による、幻惑なのだろう。
でも、奈緒にとってそんな事はどうでもよくなっていた。
現世では、味わうことは絶対にできない、白蛇の毒に、全身はしびれ、麻痺していた。

白蛇は奈緒の唇を自分の舌で確かめた。
草むらの指も、先の泉を確認する。
もう、いつ白蛇自身が潜りこんでも、いい頃あいになっている・・
泉は、内ももをつたい、床まであふれていた・・

指は、泉の入り口で、また小さな白蛇に変わると、チロチロと畔をなめ出した。

奈緒の喘ぎは、それに答えて、手押しポンプのようにリズミカルに、もれ響き、泉はそれに応えてあふれ続ける。

白蛇自身がその泉の畔に近づいた時、あふれる泉を湖畔で確かめることもできずに、吸い込まれた。

あたたかい泉の中で、白蛇自身は、脱皮を繰り返し、たちまち、大きくなる。