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夢のはなし

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順風満帆



 康夫の新しい旅は順風満帆に進んでいった。外海に出るまではエンジンを回して航行していった。
 外洋に出たところでエンジンを切り、オヤジが変えてくれた真新しい白地に赤いステッチが入った帆を張った。
 海は穏やかに康夫の旅を包んでくれた。心地よい風に乗ってDREAM号は
滑るように進んでいた。
 「順調、順調」
 そうつぶやくと帆を固定させて、座り込んで海図とGPSと見比べた。海図に現在位置を書き込んで、大きく背伸びをしてそのまま横になった。
 「しばらくこのままでいいや」
 康夫は静かな眠りに入った。
 
 青空にポカリと浮いた白い雲、穏やかな波間を進んで行くDREAM号。

 小一時間ほど寝た康夫はゆっくりと目覚めた。時計を見てつぶやいた。
 「おー!だいぶ眠れたなあ、どれどれ」と、GPSを確認した。
 「いい感じで進んでいるな」
 安心した康夫は冷蔵庫から缶ビールを取り出し栓を開け、海と空に向かって
ビールを掲げた。
 「まずは、乾杯!!」
 一息に飲み干すと、おもむろに釣りの支度を始めた。
 「つまみでも釣るか!」
 その時、数百メートル先で潮が上がった。
 「おー!鯨か?」
 それから数分、クジラショーが展開され、康夫の視線は釘付けになっていた。
 「そうか、鯨がいるってことは魚の群れがいるって事だ。こりゃ楽しめそう だぜ」
 康夫はクジラショーが終わると早速ルアーを投げた。当たりはすぐに来た。
 「オット!来た!」
 始めに40センチほどの鰤が上がった。
 「おー!鰤か?幸先いいなあ」
 しばらく集中して釣りを楽しんだ康夫は漁かに満足そうな微笑を浮かべた
 「鰤が6匹にシーラが2匹かぁ、しばらくはご馳走にありつけるな」
 康夫は手捌きも良く釣った魚を切り身にして行った。
「今日は鰤の刺身とシーラのムニエルかな・・・」
 康夫は鼻歌交じりに調理を進めていった。
 
 水平線上に浮かぶ夕陽

 そろそろ、南太平洋だろうか・・沈む夕陽にワイングラスを掲げて、今日までの航海の無事に乾杯をした。
 
 太陽は、康夫の思いを飲み込んで水平線の彼方に沈んでいった。


作品名:夢のはなし 作家名:Riki 相馬