夢のはなし
順風満帆!?
康夫の宛のない風まかせの航海は連日の漁果と共に平和に過ぎていった。
「なんか、順風過ぎてつまらないなあ・・・」
思わずつぶやいた言葉はそんな言葉だった。
そろそろ出帆してから半月が経とうとしていた。
広い海原は康夫に平和と不安をもたらしていたが、海の真ん中では嵐でも起こらない限り何の変化も与えてくれない。
でも、康夫はこの平和な時間を手に入れたくてこの旅を選んだ訳だから受け入れるしかないのだった。
「そうそう、この開放感と退屈感が欲しかったんだよな、嵐に遭っても大変だしな」
そう呟くと新しいワインを開け、太陽と青い海に乾杯して飲み干した。
DREAM号は太陽と波のキラメキの中で順風に航行していった。
康夫はワインにすっかり酔ってしまい、いつものように甲板で昼寝をしていた。その時、にわかにヨットの揺れ方が大きくなってきたのだ。
甲板にまでがぶるぐらいの大きさになっていた。康夫の体にもかかるようになってきたけど、康夫の眠りは覚めなかった。
ワインのカラ瓶は転がって海に落ちていった。帆の向きも変わってしまった
しかし、波をかぶりびしょ濡れになっても目を覚まさない康夫、横揺れで波に漂っていたヨットも帆の向きによって、波を舳先からまともに受ける角度になってしまい。1m、2mとヨットが落下するように揺れ始めた。
康夫はその衝撃でやっと目を覚ましたのだった。
「おー!これは、まずい!!」
康夫が空を見上げた時、どんよりとした雲が康夫の上だけに襲いかかるように立ち込めていた。
「この周りだけだ!ちっちゃい低気圧かな」
康夫は手際よく帆の向きを変えたり、ロープを貼り直したりと甲板上を駆けずり回っていたが、波は一向におさまる気配はなくDREAM号を襲ってきた。
ヨットが90度近く傾きだした、康夫は帆に受ける風を変えるため帆のロープを引くために海に体を倒しながら、ヨットの転覆を回避しようとした。
そんな、悪戦苦闘を1時間続けた結果、ようやく低気圧を抜け出したのだった。
康夫は疲労困憊で過ぎてきた低気圧を見つめていた。
「いや!やばかったなあ、でも面白かったぜ・・」
しかし、荷物のほとんどが海に投げ出されてしまっていたことに気が付いた康夫は、残った荷を確かめた。
「あーあ、クーラーボックスは全部なくなったか、船底の食料はとりあえず無事だな、竿がパーだ」
一安心した康夫は疲れでその場で眠りに入ってしまった。