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機械修理人 壱と半分-親月-

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手を怪我している事に気が付かなかったのか、言われて改めて修理人はその傷をじっと見つめた。そんな姿を無視して、奪うように手を重ね必死に抑えながら、少年は知識を探した。

「…ない…?」

時間にすればそんなに長い時間ではなかったとは思うのだが、通常は見つかるはずのものが

「…見当たらない…?」

何かの知識がない事は多々あったが、怪我した人間を助ける為の知識が抜けているなんて考えられなかった。迷っている間にもどんどん流れてくる、命の水。修理人が人である証。赤は空気に触れて、少しだけ黒味を帯びてくる。ぎゅっと握っても、指の間からは多くの道を作り上げて流れてくる。

(このままじゃっ…)

少年は着ていたTシャツを脱ぎ、傷口をぐるりと一周させ床に零れないようにした。そして伝える。

「ちょっと、待っていてくれよ、髭のおっさんの事呼んでくるから!!」

その言葉に答えもせずに修理人は、Tシャツの下にある傷口の方向一点を見つめてぶつぶつ何か呟く。

「…んで…」
「な、何?」
「…んで…」
「何?痛むんだろう?直ぐ呼んでくるから!!」

言葉にならない口の動きを読めないまま、少年は急いで村に一人しかいない医者の元へ走った。夜空に星が鈍く輝いている。蒸し暑さもあったが、やはり外は部屋よりも涼しいと分かった。
月は朧月。道を照らしてくれる光は期待できない。過去を遡って、残っている知識を頼りに走った。