雪の宿命を乗せて
北国の小さな町。
今年の冬は、大雪に見舞われている。屋根に届くほどの雪が積もってしまった。身動きが取れず、心も沈んでくる。
しかし春になれば、雪歌の祝言を挙げる予定になっている。久々に明るい出来事で、悠馬の心が弾む。
そんな雪に埋もれた冬の夜に、戸を叩く者がいる。
「こんな遅くから、何かあったのかなあ?」
悠馬は玄関の戸をそっと開けてみた。
そこには歳の頃は娘の雪歌と同じ、美しい一人の女性が立っていた。悠馬は、雪歌の女友達が訪ねてきてくれたのかと思った。
そして、「雪歌、友達だよ」と家の中へ声をかけようとした。
その時、その女性は声をひそめ、囁くように声をかけてきた。
「お兄ちゃん、御無沙汰してました、妹の美雪です。御心配をおかけして申し訳ございませんでした」
「えっ!」
悠馬は心臓が飛び出すほど驚いた。
よく見ると、それは紛れもなく妹の美雪だ。
しかもそれは、二十五年前に、北に向かう列車に乗って消えてしまった美雪が、その当時のままの変わらぬ姿形(すがたかたち)で。
「お兄ちゃん、いろいろと事情があってね、ここでは話せないの。だから、そこの広場まで来て」
悠馬は何が何だかわからず、ぽかーんとしている。しかし妹の美雪は、さらに言う。
「お母さんが・・・・・・そこで待ってるから」