雪の宿命を乗せて
月日が経つのは早い。
母親が消え、そして心より愛おしかった妹、美雪が忽然と消えてしまった。
それはいずれも女性として、一番華やいで、美しい年頃の出来事だった。
悠馬は、美雪が消え、悲しみのどん底に突き落とされた。しかし、それでも時は流れていった。
美雪が消えてしまってから、また二十五年という長い歳月が経ってしまった。
その間に、父は母のことも美雪のことも何も語り残さずに他界してしまった。
しかし悠馬には、妻と一人娘の家族ができた。
悠馬は、その一人娘が美雪に生き写しで、生き代わりのように思えてならない。名前も美雪の雪をもらって、雪歌(ゆきか)と名付けた。
そんな娘、雪歌はすくすくと育ち、二十歳を過ぎた。
母、そして妹美雪の血を継いでいるのだろう、肌は雪のように白い。すらりとしたスタイルに、いつも長い黒髪をなびかせている。そして利発で美しい。
美雪と同じく、この雪国一帯で、雪膚花貌(せつぷかぼう)の評判の娘に育った。
そんなある日、娘の雪歌が悠馬に話してくる。
「お父さん、私、好きな人ができたの、一度会って欲しいのよ」
悠馬は、娘がもうそんな年頃になってしまったかと驚いた。だが相手は誠実そうな好青年。辛くはあったが、嬉しかった。
「雪歌、お父さんから一つだけお願いがあるんだよ」
悠馬はまずはそう切り出してみた。
「お願いって、なに?」
雪歌が訝っている。悠馬は母や妹のことがあったので、娘に強く言っておきたいと思った。
「その人と、どんなことがあっても一生離れずに、添い遂げるんだよ、そう約束してくれるか?」
「はい」
雪歌はもうその青年との生涯に覚悟を決めているのか、何の迷いもなく、はっきりと返事をしてくれた。