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雪の宿命を乗せて

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母が消えてしまった理由、それは他に男ができたから。
決してそんな浮ついたものではない。

父は、多分それとはなしに知っていたのだろう。しかし、絶対にその理由を話してはくれなかった。

あっと言う間に過ぎ去ってしまった二十年間。
今年もまた、この雪国の小さな町に初雪が降り出した。そして本格的に寒い冬がやってきた。

そんな雪が舞う日に、美雪が悠馬に寂しそうに話してくる。
「お兄ちゃん、私、お母さんにやっぱり逢いたいの・・・・・・だからもう一度だけで良いから、捜しに行かせて」

涙を滲ませながら、そう訴えてきた。悠馬はそんな美雪が愛おしい。
「わかったよ。寒いから、風邪をひかないように気を付けてね」
そう言って、妹を送り出した。

美雪は悠馬に手を振り、実に悲しそうな顔をして、北へと向かう列車に乗って行った。
しかし美雪は、その日帰って来なかった。

そして一週間。
その後、一ヶ月、一年と。日はどんどんと過ぎ去っていったが、帰って来なかった。

美雪は母のように、北へと向かう列車に乗って、消えてしまったのだ。


作品名:雪の宿命を乗せて 作家名:鮎風 遊