雪の宿命を乗せて
幼い悠馬と美雪。
その二人の母は、二年前の初雪が降る頃に、北へ向かう列車に乗り消えてしまった。
一体どこへ行ってしまったのだろうか。わからない。
父は随分と探し回ったようだが、しかし見つからなかった。
母のいない生活。それは幼い二人にとって、とてつもなく辛くて寂しいもの。
しかし父は一生懸命、そんな寂しさに負けないように二人を可愛がってくれた。
そして、鉄橋を走る列車から投げられた母からのプレゼント、それを拾ってから二十年の歳月が流れた。
悠馬は一端(いっぱし)の青年に成長した。この町に勤めている。
彼女もできて、もうすぐ結婚する予定だ。
妹の美雪は母親譲りで、雪のように白く、すらりとした美形。
どことなく哀愁を秘め、それはそれは美しい。この雪国一帯では、美人と評判の娘に育った。
悠馬は美雪が可愛くてたまらない。自慢の妹なのだ。
しかし二人は、片時たりとも母のことを忘れたことはなかった。一度で良いから逢いたいと思っていた。
母が北への列車に乗って消えていった。そしてその二年後に、鉄橋の下でプレゼントを拾いあげた。
それから今までの二十年間、二人は何回となく、その同じ列車に乗り捜しに行った。
しかし、母は見つからなかった。