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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第七回・四】うさもさ

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「…臭いよ」
茶の間に充満しているなんともいえないネギ類独特の匂いに矜羯羅が顔をしかめた
「仕方ないじゃーん;」
南が買い物袋いっぱいの浅葱をゴミと浅葱とに分けながら言った
「なにこれ? 食べられるの? やたら臭いんだけど」
新聞紙の上に広げられた分けられた浅葱を一本摘んで矜羯羅が匂いを嗅いだ
「食えないものワザワザ泥だらけになりながらとりゃしないだろうが;」
京助が浅葱ではないゴミを買い物袋に入れて口を縛る
「おひたしにしてさ~かつおぶしと醤油かけて食うと美味いんだなぁコレが」
坂田がハッハと笑う
「でも臭いね」
矜羯羅が手に持っていた一本の浅葱をペイッと投げた
「ドリアンよかは臭くないとおもうぞ」
綺麗に分けられた浅葱を持って立ち上がった京助が言う
「嗅いだことあんのかお前」
中島が辺りに散らばった木っ端木やらを手でかき集めながら京助を見上げた
「否 !…でもまぁ…うん…いいじゃん」
ヘラヘラと手を振りながら京助が言う
「ドッドドドリアン臭っさくってプゥ!」
南が分けの輪返らない即席のドリアンのテーマらしき歌を歌った
「…君たちやっぱり馬鹿だよね」
矜羯羅がフッと横を向いて笑った
「そういやタカちゃんは?」
中島が矜羯羅に聞く
「…いつものところ」
矜羯羅がボソッと答えた
「喧嘩でもしたのか~?」
坂田が冗談交じりに言うと矜羯羅が流し目加減で坂田を見た
「…図星?」
「ウメボシ?」
「流れ星?」
京助、南、中島が言うと茶の間に沈黙がやってきた

「…何だか制多迦…左側のほっぺ…腫れてないっちゃ?;」
浅葱を茹でようと台所に向っていた緊那羅が制多迦を見つけ聞いた
「…ん; ちょっと矜羯羅(こんがら)にこう…」
制多迦が右手でグーを作り自分の頬に当てた
「…なんでまた…;」
緊那羅が聞くと制多迦が腕の中のホクロ (クロ)を撫でた
「…クロが原因なんだっちゃ?」
浅葱でいっぱいのザルを持ち直して緊那羅がホクロ (クロ)を見た
「…れ…」
制多迦が緊那羅に何かを差し出した
「…あ…これ私があげた…矜羯羅は制多迦にあげたんだっちゃね」
桜の花弁が挟まれた透明な板を制多迦が太陽にかざした
「…がいが叶うって言ったから僕の願いを言ったら…」
「殴られたんだっちゃね;」
苦笑いで言った緊那羅に制多迦が頷く
「何て言ったんだっちゃ」
あの矜羯羅がグーで殴るほどの制多迦の願いはどんなものなのか気になったらしい緊那羅が聞く

「…くの願いは僕が…僕が僕でなくなること」

緊那羅が制多迦を見たまま止まった
「なん…で…そんな…矜羯羅が怒るの当たり前だっちゃッ!!」
そして次の瞬間 緊那羅は持っていた浅葱入りのザルを制多迦目掛けて投げつけた