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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第七回・四】うさもさ

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キシキシと廊下が鳴る音がして制多迦が顔を上げると春の日差しの逆光に矜羯羅が浮かび上がった
「…っほ」
片手を上げてヘラリ笑顔を返した制多迦の隣に矜羯羅が腰を下ろす
「…京助達は?」
足を組んで頬に手を当てた矜羯羅が制多迦に聞く
「…ら山に浅葱とかいうの取りに行った」
春先一番に取れる食べられる浅葱は細いネギのようでおひたしにするもよし刻んでネギの代わりにするもよしの結構何でも使える山菜である
「…制多迦は行かなかったんだね」
矜羯羅の言葉に軽く頷くと腕の中のウサギに目を向けた
「…うだ…名前決まったんだよ」
思い出して制多迦が言う
「…ふぅん…何?」
矜羯羅が頬から手を放しウサギを覗き込んだ
「…ロ…だけど僕だけホクロ」
「は?」
制多迦がヘラヘラ笑いながら言うと矜羯羅が呆れ顔で疑問形の返事をした
「クロ?なんで制多迦だけホクロ?」
やはりワケがわからないのか矜羯羅が聞き返す
「…かんないけど中島がそういったから僕はホクロってよばなきゃいけないんだ…ねー? ホクロ」
ヘラヘラ笑顔はそのままで制多迦がホクロ (クロ)を撫でる
「…僕はクロでいいのかな」
矜羯羅が言うとホクロ (クロ)がピクッと鼻を動かして目を開けた

「本当綺麗な赤い目だね」
矜羯羅がボソッと言うと制多迦が小さく頷いた
「…うだね…ホクロの目は綺麗」
フンフンと鼻を制多迦に向けて動かしたホクロ (クロ)の鼻を制多迦が指で触った
「…も僕は…」
鼻を触った指を力なく横に落として制多迦が俯く
「僕は制多迦が好きだよ」
突然 矜羯羅が言った
「全部ひっくるめて…ね」
言ったのはいいが照れくさいのか矜羯羅はそっぽを向いていた
「…りがと」
制多迦の顔がほころんだ
「…僕がいなくなっても今は皆がいるから」
にっこり笑った矜羯羅が制多迦の手を取って何かを握らせた
「…にコレ?」
透明な薄い板の中には桜の花弁が一枚
「お守り」
矜羯羅が自分の分のソレを制多迦に見せた
「…そろいなんだね」
太陽に透かして制多迦が嬉しそうに言う
「緊那羅がくれたんだ…願いが叶うらしいけど」
矜羯羅も制多迦の真似をしてなのか太陽に透かしてソレを見る
「…がい…」
薄い花弁が太陽の陽射しを通し制多迦の顔に当てる
「…くの願いはね矜羯羅…」