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機械廃棄人壱と半分-二十三夜-

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□ ルナディア □



---月は何でも知っている、そんな筈はない。

その日は雨だった。鐘の音も、遠くからしか聴こえない位の激しい雨だった。今日は仕事がない、と呟いた廃棄人に同居人の少女は、そうなの、軽く受け流すだけ。何時もだったら、やれ何処に連れていけだ、やれあれが欲しいだと要求をたくさん突きつけられている頃だ。

「何かあったのか?」

ぶっきら棒で抑揚の薄い廃棄人の声が少女に届く。

「…別に」

彼女は一瞥して返事をし、又視線を読んでいた絵本に戻す。明らかに不機嫌なのがわかって、廃棄人は何日も前まで必死に自分の行動を遡っていく。だが、答えが見えない。此処の所、確かに忙しかったが、少女をないがしろにした事もないし、言われた事は取りあえずはクリアーしているはずだ。

「何だろうか。俺は一体何をしたんだろうか」

悩みが消えてくれない廃棄人は、部屋にとぼとぼ戻り、明日の準備をする。完了後、ベットにもぐりこんで今日が終わった。

軽く溜息をついて本をパタンと閉じる少女。

「たく、雨の音が五月蝿いのよ。…に集中できないわ」

本当の気持ちは、青年には届かないようである。