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キジと少年

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 翌日から勇人は、学校の帰りには必ず餌になる昆虫を探し、それを持って神社に向かった。
 キジは勇人の姿を見つけると、心から喜んでいるように見えた。
 持ってきた餌を美味しそうに食べるキジ。
 その傍らで勇人は、ある意味安らぎに似たものを覚えていた。
 まるで自分の家族と一緒にいるような……。

 そしてそのせいで、しばしば帰宅時間がいつもより遅くなったりもした。当然、命じられている家事をきちんとやり終えていない。そうすると、平手が飛んでくるのはいつものことで、雀の涙ほどのわずかな、そして粗末な夕飯ですら食べさせてもらえなかったりもした。


 そんな日がしばらく続くと、勇人は目に見えてやせ細っていった。
 さすがにそれに気づいた担任の先生が、放課後に勇人一人を残すと、誰もいなくなった教室で彼に質問をした。

「勇人、どうした? 最近様子がおかしいが、何かあったんじゃないのか? ちゃんとご飯は食べているのか?」

 勇人の目の高さに背を屈めて、そう言って心配してくれる先生の言葉に、勇人はよっぽどすべてを話してしまいたいという欲求に駆られた。
 そしてその胸に泣いて甘えたい。

 しかし勇人は、口が利けないせいもあったが、ギュッと口を結んだまま切ない眼差しで先生をただ見つめているだけだった。そしてその頬にはとめどなく涙が溢れてはツツーッと流れて落ちた。

 先生は指先でそっと勇人の涙を拭うと、メモ用紙を持ってきて、
「ここに言いたいことを書いてみなさい」
 と言ってくれたが、勇人は首を横に振るだけだった。

 先生はきっと何かあるんだろうとは思いつつも、仕方ないと思ったのか、その手で勇人をギュッと抱きしめ耳元で優しく言った。

「いいか、辛いことがあるんならいつだって遠慮なんかしないで、先生に手紙でもなんでもいいから寄こすんだぞ」
 勇人はこくんと頷いた。

 しかし実際のところまだ八歳の勇人には、今の家での状況をどう説明したら良いのかが分からなかった。もし上手く伝えられたとしても、やはりそのせいで帰る所がなくなるのも怖かった。

 あんなに酷い仕打ちを受けてはいても、それでも一人ぼっちになるよりはいいと思っていたのだ。

 もし、もう少し年がいっていたら……、せめて中学生にでもなっていたなら、あるいは自分一人で生きる道を探していたかもしれないが……。

作品名:キジと少年 作家名:ゆうか♪