秘められた想い
ふたりは慌てて乗り込んだ。あっという間に車内は満席以上になった。乗車率二百パーセントに近いのではないだろうか。これからこの列車で浜松まで、二時間半のロングランが待っている。この先の長時間乗車を考えると、113系なので田村はホッとした。山の手線のようなロングシート車だったらうんざりする所である。
沼津を過ぎると、ひとつのボックスをふたりで占領できるくらいに車内は空いてきた。この分だとどうにか終点まで持ちこたえられそうだと、田村は思った。だが、それが大きな間違いだったことに、あとで気付くことになった。
富士駅で身延線の123系普通列車と出会った。
「あれは元荷物車だった車両を客車に改造したものなんだよ」
「そうなの?詳しいのね」
少し経って理絵を見ると、彼女は早起きをしたせいか、或いは暖房のせいか、居眠りをしていた。その顔が可愛らしい。田村は十月の始め頃に、彼女と再会したときのことを想い出していた。
朝の路線バスだった。小学校を卒業して以来の、十二年振りの、水野理絵との奇跡的な邂逅だった。彼女は二十四歳の美人OLになっていた。きれいな長い髪とスカーフが印象的だった。ドキドキした。田村はうっかり変なことを云ってしまった。