秘められた想い
「足の速さが二度目に役立ったよ」
ふたりは笑顔で握手をした。外の暗い景色を眺めながら、米原から一時間で山科まできた。理絵は疲れたらしい。ずっと田村にもたれていた。
もう、すっかり夜になっていた。ふと横に眼をやると、湖西線からやってきた117系の明かりが見えた。
「あの列車は車内がガラガラだよ」
「列車の運行の仕方がおかしいわね。ただ走らせていればいいと思ってるの?」
「何も考えてないね。理絵さんの云う通りだ」
たった一駅だが、アンカーの臨時交代である。普通2861M、この鈍行リレー旅行の最終ランナーだ。
東京を出発して実に十時間!漸く京都に到着した。
「やっと着いたよ」
「京都は遠いところだったのね」
「狭い日本、というのは嘘だね」
「地球が大きいということでもあるわね」