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秘められた想い

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田村は再び表情を曇らせた。
「それでね、わたしは彼に云ったんです。田村君への虐めをやめたら考えてあげるって」
「そんなことを?それはまた驚きましたね……或るときから僕はドッジボールで標的にされなくなったから、どうしたんだろうと不思議に思ってました。そんなことがあったんですか。ありがとう。理絵さん」
田村は感動していた。
「ずっと忘れていたことなのに、今夜はいろいろ想い出させて頂きました」
「また今度、想い出話をしましょう」
笑顔の理絵が差し出した手を、田村は握った。
「ええ、また今度……」
そうして会っているうちに、ふたりは急速に親しくなって行ったのだった。
漸く大垣まで辿り着いた。ずっと座ることができなかった。
「足が重くて痛いわ」
大垣で後続の米原行き、第五ランナーの2325Fが到着した。この列車も満員である。
「また座れないのね。人生は厳しいな」
「本当だね。鈍行列車の旅は、人生のように厳しいね」
作品名:秘められた想い 作家名:マナーモード