秘められた想い
「僕は走るしか能がない、馬鹿な奴だと思われているんだって、いつも劣等感を持っていました」
「そうだったんですか!信じられないことですよ。誰からもラブレターをもらわなかったんですか?」
「ラブレター!そんなもの、一度も受け取ってませんよ」
「本当に?不思議な話ねぇ」
「……宮田は憶えてますよね。いつも級長だった秀才です」
宮田はリレーの第三走者で、速いくせにわざと遅れて田村にバトンを渡した男だった。
「忘れるわけないわ。わたし、あの人が大っ嫌いだったんです!」
田村はそれを聞いてうしろめたいように思いながらも喜んだ。
「そうなんですか。正直なところ癒されますね。僕はあいつから虐めれていたんです。例えばドッジボールのとき、みんなが僕を標的にしていたの、判ってました?」
「わたしね、それは宮田君がほかの子たちに指示してやっていることだと、見抜いていたんです」
「さすがですね。素晴らしい洞察力です」
「わたしは宮田君からラブレターを渡されて、交際を求められたんですよ」
「想像通りですね。やっぱりそうでしたか」