秘められた想い
「理絵さんは初恋の人なんです。十二年前に何度もラブレターを書いたけど、うまく書けなくて諦めたんですよ」
「えっ!?今日はびっくりの連続ですよ。わたしもね、田村君が初恋の人だったんです!」
「そうなんですか?!嬉しいけど、もっと早く知りたかった。まるで知らなかったんです」
「どうしてラブレター、渡してくれなかったんですか?」
「だからね、文章が下手だし、字はきたないし、それで諦めたんです」
「そんなこと関係ないと思います。だって、本当に好きという気持ちがあったら……」
「本当に好きでしたよ。毎日夢の中で会ってました。きれいな花が咲き乱れる池の畔を、
毎日理絵さんと手を繋いで歩きました」
「そのまま書いて読ませてくれれば良かったのに……」
バーで理絵から教えられた携帯電話の番号に、その数日後、田村はアクセスした。そして、今度は居酒屋へ誘った。その居酒屋は理絵も以前から気に入っていたので、上機嫌だった。彼らは生ビールを飲みながら話した。
「わたしはね、田村君が云ったことを毎日、日記に書いてましたよ」
「そうだったんですか!どんなことを書いたんですか?」