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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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マッチ売りのマッチ

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 青年は食い入る様にその光景を見ていたが、残念ながらマッチの軸はすぐに燃え尽きてしまった。
 青年は慌てて次のマッチを擦った。
 続きの光景の中で女の子は静かに息を引き取って逝った。
 女の子の安らかな顔はこの上ない幸福に包まれている様に思えた。

 青年は更にマッチを擦ってみる。
 今度は大人の女が見えた。
 どうやら商売女らしいのだが、何故かその目はその顔は恐怖に歪んでいた。
 暴漢に襲われているらしいのだが、音は聞こえてこない。
 ナイフを持った男の背中が時々見え隠れしている――。

 その光景が青年の何をかき立てるのかは定かではないが、青年は慌てて次のマッチに火を点けた。
 数本のマッチを擦るうちに女は殺されてしまった。

 激しい動悸が青年を襲ったが、もはや青年には自らマッチを置くことは出来なかった。
 全てのマッチを使いきるうちに揺らめく炎の中で幾人もの不幸な女達が無残な最期を遂げた。
 そしてマッチの炎と共にその忌まわしい光景も薄暗い部屋の闇の中に消えて行ったのであった。

 しかし、青年の目には不思議な出来事をもたらしたマッチの炎が、安らかな死に顔や凄惨な光景と共に消える事無くチロチロと燃え続けていたのである。

 それは後に「切り裂きジャック」と呼ばれる男の、まだ犯罪を重ねる前の出来事だった――。


 おわり
       03.02.19