マッチ売りのマッチ
<マッチ売りのマッチ>
その年、ロンドンはいつにも増して厳しい冬を迎えていた。
新しい年が来た日の夜。
誰も居ない部屋に帰宅したその青年は霜がついて真っ白になった窓に息を吹きかけ、更に手で擦ってみた。
ガラスを覆う真っ白な霜に小さな穴をつくると青年はそこに顔をつけて外を窺った。
雪の積もった道には人影は無く、ただ馬車のわだちがでたらめな模様をつけているのみだった。
ストーブの火が落ちていた。
暗い部屋は冷え切っていて物音さえも凍りつきそうな程であった。
青年はストーブに薪をくべ火を点けようとポケットからマッチを取り出した。
が、マッチの箱は空であった。
仕方なくそこらじゅうを探すと……。
上着の内ポケットに在った。
確かそのマッチはクリスマスの夜に街頭で小さな女の子が売っていた物だ。
もともと安価なそれを青年はさらに値切って買った。
女の子はみすぼらしい身なりの青年の申し出を快く受けてくれたのだった。
青年はかじかむ手に息を吹きかけ、マッチを擦った。
と、どうだろう、小さなマッチの炎の向こうに別の場所の光景が浮かび出たのだ!
揺らめくマッチの炎の中に浮かぶ映像はあのマッチ売りの少女のものであった。
みすぼらしいなりをした少女は雪の降る街頭に裸足で座り込んでいる。
そして今の青年と同じ様にマッチの炎を灯していた。
その目に何が見えているのかは分からなかったが、女の子は幸せそうな表情とは裏腹にその目には生気が無く命の炎もマッチと共に消えそうになっているのは明らかだった。
その年、ロンドンはいつにも増して厳しい冬を迎えていた。
新しい年が来た日の夜。
誰も居ない部屋に帰宅したその青年は霜がついて真っ白になった窓に息を吹きかけ、更に手で擦ってみた。
ガラスを覆う真っ白な霜に小さな穴をつくると青年はそこに顔をつけて外を窺った。
雪の積もった道には人影は無く、ただ馬車のわだちがでたらめな模様をつけているのみだった。
ストーブの火が落ちていた。
暗い部屋は冷え切っていて物音さえも凍りつきそうな程であった。
青年はストーブに薪をくべ火を点けようとポケットからマッチを取り出した。
が、マッチの箱は空であった。
仕方なくそこらじゅうを探すと……。
上着の内ポケットに在った。
確かそのマッチはクリスマスの夜に街頭で小さな女の子が売っていた物だ。
もともと安価なそれを青年はさらに値切って買った。
女の子はみすぼらしい身なりの青年の申し出を快く受けてくれたのだった。
青年はかじかむ手に息を吹きかけ、マッチを擦った。
と、どうだろう、小さなマッチの炎の向こうに別の場所の光景が浮かび出たのだ!
揺らめくマッチの炎の中に浮かぶ映像はあのマッチ売りの少女のものであった。
みすぼらしいなりをした少女は雪の降る街頭に裸足で座り込んでいる。
そして今の青年と同じ様にマッチの炎を灯していた。
その目に何が見えているのかは分からなかったが、女の子は幸せそうな表情とは裏腹にその目には生気が無く命の炎もマッチと共に消えそうになっているのは明らかだった。