もう一人の私 (Another me.)
高見沢は「ふー」と大きく息を吐いた。そして、「やっと終わったぞ!」と大きく達成感一杯の声をあげた。
その後、画面上の「完了」を慎重にクリックする。すると表示は直ぐに変わり伝えてくる。
「情報収集は完了しました。只今から『Another me』の創造のための処理を行います。10分程度かかりますので、暫くお待ち下さい」
さらに「高見沢様へ、『Another me』(もう一人の私)に愛称を付けて下さいね」と指示してきた。
これに対して、高見沢は「まあ俺に似て可愛いヤツなんだろうなあ。俺は一郎、そうだ、高見沢二郎にしよう」、そう独り言を呟いて、画面の指定枠の中に、「高見沢二郎」と打ち込んだ。
パソコンはカチカチカチと音を立てて、一生懸命仕事をしてくれているようだ。そして暫くの時間の経過後、その作動音は突然止まった。
そしていきなり、「ダ・ダ・ダ・ダ~ン♪♪~ダ・ダ・ダ・ダ~ン♪♪」、なんとベートーベンの運命のイントロが流れた。そして画面には出生のアナウンスメントが。
「おめでとうございます。このパソコン内に新しい生命が誕生しました。高見沢様と同一人格を持つ、愛称・高見沢二郎様です」、こんな表示が表れた。
「おっおー、目出度いことだ! 遂にアナザー・ミーの二郎が誕生したか、嬉しいなあ」
高見沢は大感激。そして「次へ」をクリックすると、画面はさっと変わり、高見沢二郎のポートレート(写真)が映し出された。
しかし、よーく見ると、高見沢自身よりスリムでカッコイイ。少しお腹がへっこんでいるようだ。
高見沢はなぜそうなっているのかを知っていた。基本情報で、体重を3キロほど減らして、嘘入力しておいたからなのだ。
「なかなかイイ男じゃん、俺よりも五歳は若返ったかなあ」
そんなことを思いつつ感激していると、二郎から早速の御挨拶が飛び込んでくる。
作品名:もう一人の私 (Another me.) 作家名:鮎風 遊